秋 白秋

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新型コロナウイルスによる感染拡大によりほとんどの祭やイベントが中止になり、緊急事態宣言解除後も密を避けるために、また準備不足などで秋までは中止の続く日々が続きそうです。

本ブログも一時中止していましたが、過去の祭やイベントを掲載することで気分だけでも東京の江戸情緒や楽しさを味わっていただけたらと思います。

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秋の別名に白秋がある。

 

季節にはそれぞれ色がある。
春は青で青春、夏は赤で朱夏(しゅか)、冬は黒で玄冬(げんとう)である。白秋をそのまま雅号にしたのが詩人であり歌人北原白秋である。

 

さて秋最大の楽しみはお月見である。
満月である仲秋の名月を愛でるだけでなく、新月から三日月、半月の上弦の月から満月へ、そして逆側からかけていき月の出がだんだん遅くなっていく。

いわく立待月、居待ち月、寝待月から二十三夜待ちと続く一カ月。
しかしまだ観月は続く。
月が見えなくなってまた細い顔を出し、満月の二日前の十三夜まで四十三日間の天体ショーである。
一年で最も美しいとされる仲秋の月、気候もいい。

 

観月の期間には秋彼岸も重なる。

秋の七草を身近に感じながら身近な先祖に思いを馳せ墓参りをする。
なんとも日本人であることを実感できる時期である。

浴衣姿に団扇を持って、縁側には月見団子にススキの穂、満月を見上げていると虫の声。
一度もそんな体験がなくともなぜか懐かしく感じる風景である。

 

北原白秋の童謡に「お月さまいくつ」がある。

お月さまいくつ。十三七つ。まだ年ゃ若いな。あの子を産んで、この子を産んで、だアれに抱かしょ。お万に抱かしょ。お万は何処へ往た。油買いに茶買いに。油屋の縁で、氷が張って、油一升こぼした。その油どうした。太郎どんの犬と次郎どんの犬と、みんな嘗(な)めてしまった。その犬どうした。太鼓に張って。あっちの方でもどんどんどん。こっちの方でもどんどんどん。

 

なんとも不思議な歌である。

見ている月は十三夜の七つ時。
その月から妊婦を想像し、子供が生まれ、その子守に話が移り、油屋で粗相してこぼした油を犬に嘗められてしまったので、怒ってその犬を殺して太鼓の皮に張ったというのだ。

 

このあっけらかんとした残酷さと、そんな歌を子供たちが楽しそうに無邪気に歌っている姿はなんだか異様である。
これは現代の創作物から失われた世界である。
というより完全にアウト。

たとえばNHKの「みんなのうた」でアニメ付きでこの歌が放送されたとすると、はじめはほのぼの、最後はスプラッタになってしまいそうである。
別に規制されているわけではないのに完全に自主規制の範疇である。
それはそれでなんだか怖い気がするが。