夏休み・肝試し

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新型コロナウイルスによる感染拡大によりほとんどの祭やイベントが中止になり、緊急事態宣言解除後も密を避けるために、また準備不足などで秋までは中止の続く日々が続きそうです。

本ブログも一時中止していましたが、過去の祭やイベントを掲載することで気分だけでも東京の江戸情緒や楽しさを味わっていただけたらと思います。

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子供たちにとって待ちに待った夏休みである。

 

特に小学生にとってはイベント盛り沢山の夏休みである。
臨海学校、林間学校、サマーキャンプに行く子供たちも多いと思うが、そこでのお楽しみのひとつが胆試しである。

夜に暗い墓場を一周して帰ってくるというのが定番だが、中で待ち構えて驚かすのが妖怪たちである。
唐傘お化け、人魂、鬼火、提灯お化け、頭に三角の布をつけた死人、骸骨などに扮するわけだが、映画でリアルなCGホラーを沢山見てきた子供たちにとって、果たしてこれらの妖怪は怖いのか? 

 

妖怪マンガの第一人者、水木しげるの妖怪ワールドの住人には鬼太郎をはじめ、ぬり壁、一反木綿、ねずみ男に目玉のおやじ、猫娘砂かけ婆、子泣き爺らがいるが、ほとんどは水木氏のオリジナルキャラクターだという。

妖怪たちは驚かせたり困らせたりする程度で死に至るような悪さはしない。
その辺も愛される理由である。

最近再発見されて歌舞伎で上演されて話題になった妖怪「豆腐小僧」にいたっては豆腐を持って立っているだけで怖くもなんともない。
それどころか可愛い。
そのことがコンプレックスになっている気弱な妖怪である。
江戸時代から語られている豆腐小僧は現在のゆるキャラの元祖かも。

 

かようにいつの間にか日本の妖怪たちは愛されキャラとなって久しい。

そんな中ろくろ首や狐狸、ムジナで怖がるわけもない。
しかしこれでは肝試しは成立しない。
怖いどころか、妖怪はふるさと創生プロジェクトや町おこしの目玉になっている。
本郷の東京大学付近にある木造和風旅館「鳳明館森川別館」では月に一度妖怪のコスプレをして楽しむイベントが開かれている。
これでは妖怪はすっかり憧れの存在である。

 

では欧米のホラーキャラクターたちはどうかというと、狼男、ドラキュラ、フランケンシュタインの御三家はマンガやアニメの「怪物くん」で日本ではかなり前から愛されキャラと化し、ハロウインのお化けたちはもっと以前から子供の仮装行列の定番である。

怖い妖怪はいなくなってしまい、代わりに登場したのがゾンビと貞子である。
共通しているのはどちらも人間だったことである。

妖怪たちはファンタジーとなり、真に怖いのはなんといっても人間なのである。