蚕(かいこ)

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新型コロナウイルスによる感染拡大によりほとんどの祭やイベントが中止になり、緊急事態宣言解除後も密を避けるために、また準備不足などで秋までは中止の続く日々が続きそうです。

本ブログも一時中止していましたが、過去の祭やイベントを掲載することで気分だけでも東京の江戸情緒や楽しさを味わっていただけたらと思います。

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蚕が卵から孵り、およそ四週の間に四回脱皮を繰り返す。

脱皮して新しい皮ができるまでじっとしていて眠っているように見えることからこの時期を眠(みん)という。


皮ができると猛烈な勢いで桑の葉を食べる。

この侯は蚕が桑の葉を食べ始めるころ。

五回の脱皮を終えた蚕は場所を定めたあと二日ほどかけて繭を作る。
この繭が絹糸の原料である。

 

日本の絹糸は品質が良く明治時代から昭和の初めころまでは輸出品の主要品目であり、農家では貴重な現金収入であったため、稲作と並行して盛んに行われ、米の採れない山里ではなおのこと重要な産業であった。

世界中で愛された日本の絹だったが、昭和三十年ころをピークにウールやポリエステルに押されて需要が落ち始め、現在東京では八王子・町田・武蔵村山の三市にわずか七軒の養蚕家しかいないという。

 

かつて日本の輸出を支えた重要産業であったため、皇室でも明治時代から養蚕が行われており、歴代皇后に受け継がれている。

2018年は平成皇后最後の養蚕になった。

報道によると、5月2日に皇室内の野蚕室飼育している野生種の蚕、天蚕(てんさん)の卵がついた和紙をクヌギの枝にホチキスで一枚ずつ付ける「山つけ」の作業が行われた。
天蚕はクヌギの葉を食べて育ち緑色の繭を作る。

本侯にあたる5月21日には皇居内の紅葉山御養蚕所で蚕に桑の葉を与える給桑をされた。
その後6月に入りできた繭を収穫する作業が行われる。

 

春に育った繭を春蚕(はるご)繭と言い、かつては養蚕農家が収穫した繭を集荷所に出荷し、その後製糸工場に届けられていた。

関東では世界文化遺産に登録された群馬県の富岡製糸工場で2008年から繭を受けつける「荷受け」の様子が再現されている。
富岡市の養蚕農家養蚕企業は十七軒で年間5450kgの出荷を目指している(2017年)。

 

皇居では天蚕を育てている野蚕室の繭の収穫が7月12日に行われ、例年通り天皇皇后両陛下そろって収穫された。

 

 逡巡として繭ごもらざる蚕かな  虚子