とんど焼 鳥越神社 1月8日(2018年)

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新型コロナウイルスによる感染拡大によりほとんどの祭やイベントが中止になり、緊急事態宣言解除後も密を避けるために、また準備不足などで秋までは中止の続く日々が続きそうです。

本ブログも一時中止していましたが、過去の祭やイベントを掲載することで気分だけでも東京の江戸情緒や楽しさを味わっていただけたらと思います。

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どんどとは火が燃え盛る様子を現わした語。

歳神様(としがみさま)を迎えるために飾っていた正月飾りを神社に持って行き、燃やすことで一年の五穀豊穣を祈念する。

とんど焼で知られるのは、台東区の鳥越神社と新宿区の花園神社の湯の花神事である。毎年成人式にあたる1月15日に行われていたが、成人式が1月第二日曜に変更されてからこのとんど焼も日にちを合わせるようになった。

 

 集められた注連縄(しめなわ)や正月飾りを積み上げ祝詞(のりと)を捧げたあと炊き上げる。
その火にあたることで無病息災の御利益があるという。

地方によっては焚き上げの火を囲んで子供たちが長い竹で地面を叩くということも行われているようである。
穀物を荒らす地中のモグラや虫を退治するといった意味合いもあるようだ。

子供たちにとって習字の書き損じを持ってきて一緒に燃やし、その灰が高く上がるほど習字が上達するという言い伝えがあり、灰が高く上がると歓声が上がったそうである。

 

お焚き上げの火で餅を焼いて食べるのも子供たちの楽しみのひとつ。

群馬など、養蚕の盛んな地方では餅をミズキの枝に刺した餅花を焼く。
形が蚕の繭玉に似ているためメーダマと呼ばれている。
いずれも正月の終りを告げる風物詩である。

花園神社などでは「湯の花神事」「湯の花祭」と呼ばれ、お焚き上げの火で湯を沸かし奉納したあと甘酒にして参拝者にふるまわれる。

 

2018年は正月明け8日に鳥越神社に行ってみた。

とんど焼・鳥越神社

とんど焼・鳥越神社

正午開始という告知に方向音痴のために迷いながらもなんとか到着して驚いた。
建物に囲まれた住宅街の中、とても広いとは思えない境内で「ほんとにここで燃やすの?」とぎくりとする。

人混みのなかでよく見ると、境内に東京消防庁の方々がスタンバイしている。
不穏な気持ちの中、アナウンスが流れ鳥越神社のとんど焼のいわれなどを解説する声がとても誇らしい。

そしてまず行われたのが東京消防庁による散水。

とんど焼きの前に行われる消防庁の放水

とんど焼きの前に行われる消防庁の放水



とんど焼が行われる周りの建物、お宮や社務所、手水場などお構いなしでバシャバシャと、とにかくホースで水をかけまくる。
寒空に屋根から滝のようにしたたる水!
続いて薪が積まれた場所を中心に宮司さんの祝詞が捧げられ、いよいよ開始。

 

じょじょに燃え盛るとんど焼。

とんど焼きと餅を焼く竿

とんど焼きと餅を焼く竿

アナウンスの声がそこにかぶさる「とーんど、とんど、とーんどとんど! はい皆さんご一緒に! とーんどとんど!」叫びながら竹で地面を叩きモグラなどを追い出す。
炎は心配になるくらいに高く燃え上がっており、水責めの後は火責めが展開される白日夢! すごい!

しかしそんなことにはお構いなく、今度は竹に刺した餅をその炎で焼いて子供や女性、外国の方に配っている。
無病息災の縁起ものだから私も欲しかったが、どこのイベントでもオジさんには冷たい。
当然くれるわけもないので、こちらも「モチなんか欲しくなんかないわい!」という雰囲気を醸し出す。
そう、武士は食わねど高楊枝。
…すまん。
用法を間違った。

多くの方々はこれらの神事を見て餅を食べながら参拝の長い列に並ぶのだが、あまりに長い行列に気圧されて、当方はそのまま鴬谷方面へ帰ることにした。
まことに罰あたりな輩である。

 

しかし江戸は昔から火事が多かった。
その名残りとは言わないだろうが、消防法がうるさく、とんど焼やどんど焼は許可が出ず、中心部では珍しく行われているのがこの鳥越神社なのである。
いつ中止になってもおかしくないので、今のうちに体験することを節にお勧めする次第である。

 

 黒こげの餅見失うどんどかな  犀星