田植え

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新型コロナウイルスによる感染拡大によりほとんどの祭やイベントが中止になり、緊急事態宣言解除後も密を避けるために、また準備不足などで秋までは中止の続く日々が続きそうです。

本ブログも一時中止していましたが、過去の祭やイベントを掲載することで気分だけでも東京の江戸情緒や楽しさを味わっていただけたらと思います。

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東京近郊での田植えはGWの連休中に終えるサラリーマン農家と、稲作の裏作に麦を育てている農家は麦を刈り取ってからの6月が田植えの時期になる。

 

4月中に田植えを終えてしまうのは早生品種の苗。
稲作専門のプロ農家はGW明けから田植えが本格化するなど、実はまちまち。

ではどのパターンが多いかと言うと、驚いたことにサラリーマン農家のGW中の田植えが圧倒的に多いらしい。
これは仕事の休みに一気に田植えを終えようとするためで、稲にとっていい時期ではなく全くの人間の都合。

稲作専業のプロ農家は稲にとって最良の日を選んで田植えをするので6月が多いのだとか。

 

田植えといえば皇居内にも水田があり、天皇陛下の仕事として、うるち米のニホンマサリともち米のマンゲツモチという品種が種もみから育てられ、5月25日(2018年)が平成天皇として最後の田植えとなり、計九十株が植えられた。

秋に収穫される新米は11月の新嘗祭などで神前に供えられる。

 

天皇陛下の稲作と、皇后陛下の養蚕は日本の食と貿易を支えた二本柱である。
それを身をもって体験することは、かつての統治者の心構えを伝える行事として重要である。

 

では田植えが都会の子供には全く縁がなくなったかというとそうでもなく、小石川植物園の水田は地元の小学生が植えたものであるし、大宮八幡にある幼稚園でも園児たちが田植えを行い、秋の新嘗祭に奉納しているという。

とはいえ両者のような事例はまれで東京23区の子供たちには縁がほとんどない。
稲作と養蚕を毎年欠かさず行っている皇室に見習い、どちらも全国の小学校で必修にするべきであると思う。

 

さて話を元に戻して田植えである。

映画「七人の侍」や「のぼうの城」で田植えシーンがある。
どちらも男たちが太鼓などを叩いて歌い、早乙女や女性たちがリズムに合わせて田植え唄を歌いながら楽しそうに田植えする姿が印象的だ。

どう印象的かというと、まず、男たちは田植えをしていない。
歌っているだけ。
うすうす感じてはいたが、戦国・江戸時代では農村であっても一家の主たる男たちはあまり働かない。
男にとって妻や子供は家族というより支配する者だったのだろう。

 

もうひとつは楽しそうな田植えの風景だ。
これは田圃作りの基礎が終わりいよいよ米作りが本格化するという職業的な喜びを表すということと、村総出の田植えは数少ない男女の出会いの場だったということ。

若い早乙女達も張り切っていたに違いない。
若い独身の男たちにとって、早乙女達が笑顔で歌い、素足をひざまで出して一糸乱れず田植えする姿は、AKB48のステージ並に魅力的だったはずだ。
うん、これは盛り上がって当然だな。
田んぼのカエルも恋の季節を迎えている。

 

千葉県の香取神宮御田植祭では早乙女達の昔ながらのいでたちでの田植え風景や田植え唄が見られる。
毎年4月の第一週の土日に行われるのだが、時期としてはとても早い。

 

 早乙女や泥手にはさむ額髪 鬼城

 渓流の音に雨添ふ田植えかな 水巴

 早苗とる手もとや昔しのぶ摺(ずり) 芭蕉

 風流の初めやおくの田植歌 芭蕉