太田記念美術館

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新型コロナウイルスによる感染拡大によりほとんどの祭やイベントが中止になり、緊急事態宣言解除後も密を避けるために、また準備不足などで秋までは中止の続く日々が続きそうです。

本ブログも一時中止していましたが、過去の祭やイベントを掲載することで気分だけでも東京の江戸情緒や楽しさを味わっていただけたらと思います。

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祈年祭の気分直しに表参道にある浮世絵専門美術館である太田記念美術館に寄ってみる。

太田記念美術館の写真

太田記念美術館
太田記念美術館の様子の写真
太田記念美術館の様子の写真
太田記念美術館


太田記念美術館は昭和五十五年(1980年)開館、平成28年(2016年)に北斎美術館ができるまで東京で唯一の浮世絵美術館である。
一万四千点の収蔵作品の中から企画展を行い、こじんまりとした二フロアーながら上質の作品が楽しめる。

この日は「幕末・明治 激動する浮世絵」展。
その完成度の高さ、保存のよさに思わず見入ってしまった。
明治初期はまさに浮世絵の完成期だったのだろう。
その後はもっと簡便な印刷技術の普及により衰退してゆく。
これは最後の浮世絵展という意味合いも持つ。

 

浮世絵は日本が誇る芸術であり文化である。
世界で最高の評価をされる日本の美術は浮世絵だけと言って過言ではないのに、どうも日本での評価は低い。
その理由は浮世絵が庶民のために描かれた娯楽であるのと、作品が版画という印刷物で唯一無二でないからだろう。

肉筆主義、日本画至上主義からの観点であろうが、全く時代錯誤としか言いようがない。
もちろん国宝の浮世絵は一点もない。
印象派の画家たちに衝撃と影響を与えた北斎も広重も写楽歌麿も国は肉筆作品以外評価しない。
日本が後生大事に国宝にしている書や掛け軸の多くは、西洋から見れば単なる中国の真似である、とされているにもかかわらず、である。

浮世絵は日本が独自に産み出した芸術文化である。
このことは幕末以降、日本が西洋の影響を受け、多くの画家が油彩に傾倒したにもかかわらず、やはり単なる民族的な模倣としかとらえてもらえず、百五十年以上たったのち、世界の賞賛と評価を受けているのはマンガという印刷物であったのとよく似ている。
よく出来た類似品ではなく、芸術に求められるのは独自性であるという当たり前のことを痛感させるのだ。
日本の画壇は独自の繭の中の世界である。
日々の稽古によって完璧な技術を持っているだけでは工芸家にはなれても芸術家にはなれない。

芸術は人格でも家柄でも学歴でも評価されるものではない。
もちろん人脈などではない。
ただ作品によってのみである。