寒中の世界

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新型コロナウイルスによる感染拡大によりほとんどの祭やイベントが中止になり、緊急事態宣言解除後も密を避けるために、また準備不足などで秋までは中止の続く日々が続きそうです。

本ブログも一時中止していましたが、過去の祭やイベントを掲載することで気分だけでも東京の江戸情緒や楽しさを味わっていただけたらと思います。

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一年で最も寒さの厳しい時期、大寒である。

 

大寒・東京に降る雪

大寒・東京に降る雪

この時期には寒の文字を冠した美味しい食べ物が多い。
寒鰤、寒鮒、寒鯖、寒シジミなどだ。
ふぐやアンコウなど鍋の両横綱が最も美味しいのもこの時期である。
寒卵も濃厚で美味しいとされているが、寒雀という言葉もまたこの時期の雀は美味しく薬になるということなのだそうだ。

寒鴉(かんあ・かんがらす)という冬のカラスを表す言葉があるが、こちらは食べるわけではなさそうなのでご安心を。
ほかにもこの時期の寒中の水を寒の水と言い体に良いとされ、薬を飲むのに適しているというのは、濁りや虫がいないきれいな水ということだろう。

 

こんな寒い時期にも花は咲く。

大寒・雪景色

大寒・雪景色


寒牡丹、寒木瓜、寒葵。
寒椿は小ぶりの八重の花、寒菊も小ぶりの黄花、この時期に咲く早咲きの桜を寒桜といい、カンヒザクラオオシマザクラの雑種。
寒梅も忘れてはいけないところだろう。

ちなみに温室があるのと同様に、寒室というものがある。
暖かいところを好む動植物がいると思えば、寒い所を好む動植物もいるのだ。

大寒・東京の雪景色
大寒・東京の雪景色
大寒・東京の雪景色

 

寒紅という言葉は、寒の時期に作った化粧品の紅が上質とされていることによる。
布を寒い時期の川に浸けたり寒風に当てることで布を丈夫に、また色鮮やかにする寒晒しもある。
寒い時期にこそ武道の稽古をするのが寒稽古。
あえて寒い時期と時間を選んでやる寒行でもある。

寒の入りになり、大寒が終わると旧暦の一年も終わる。
寒明けという言葉はすなわち立春を指す。

 

 寒梅を手折るひびきや老いが肘 蕪村

 

大寒の雪の夜

大寒の雪の夜