正月遊び・東京国立博物館 1月1~3日

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新型コロナウイルスによる感染拡大によりほとんどの祭やイベントが中止になり、緊急事態宣言解除後も密を避けるために、また準備不足などで秋までは中止の続く日々が続きそうです。

本ブログも一時中止していましたが、過去の祭やイベントを掲載することで気分だけでも東京の江戸情緒や楽しさを味わっていただけたらと思います。

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いまや都心で凧揚げ、独楽回しなど家の外で正月遊びに興じている子供を見ることがなくなって久しい。

完全に絶滅危惧種である。

家の中でも、福笑いやカルタ取りなどまずやらない。
それでも東京都はなんとかこうした伝統行事や遊びを保護しようと正月の2日と3日に獅子舞・お囃子・昔遊びなどを披露し子供たちに昔遊びを体験してもらおうという催しを行っている。
東京都庭園協会のうち浜離宮恩賜庭園・旧古河邸庭園・六義園向島百花園などだ。

 

正月気分を味わうべくその年は東京国立博物館に出かけた。

こちらは毎年正月の2、3日に獅子舞と和太鼓などを披露し、同時に干支などにちなんだ美術品を特別展示している。
入場料620円。

まず見たのは和太鼓の演奏。
湯島白梅太鼓という女性主体の和太鼓だが、実にパワフルで華麗なバチさばきである。揃いの白梅模様の衣装にきりりとねじり鉢巻きをし、三十分もの間休みなく動き回り叩き続ける。
それもそのはず演奏者の若いこと。

白梅太鼓の皆さん

白梅太鼓の皆さん

久米の仙人のごとくそのあまりに健康的な太ももに目がくらみ、演奏後一緒に記念撮影をと申し出たが、こちらのおやじ丸出しの要望にも嫌そうな顔ひとつせず、実にプロのふるまいで感心した。

 

次は獅子舞が披露された。

正月遊び・獅子舞

正月遊び・獅子舞

獅子舞というと小太鼓に合わせて獅子が舞う、程度の認識しかなかったが、こちらは実に本格的。

まず獅子の動きが実に見事。
生き生きとそして力強く、その技術に思わずうなる。

正月だからか、獅子の後ろに大黒様と恵比寿様が控えている。
恵比寿様が出やると釣り竿を操って大きな鯛を釣り観客に披露。
続いて大黒様が出てきて、打ち出の小槌を振って金(紙?)を出し、観客にばらまいて行く。

正月遊び・獅子舞と恵比寿・大黒様

正月遊び・獅子舞と恵比寿・大黒様

最後は獅子が再び登場して観客席に降りて行っての、恒例の頭噛み。

縁起ものだからと客もよく知っていて、次々に頭を差し出していく。
何というか普段の余興といった獅子舞のイメージが完全に覆された。
これは見事な古典芸能であり神楽舞である。

 

正月気分を満喫したところで、展示を見に館内に入る。

干支の酉にちなんだ壷や香合などの展示品が並ぶ。
クイズ形式になっており、展示を見ながらすべて答えて用紙に書き込み提出すると記念品がもらえるイベントつきである。

続いては本日の目玉である、長谷川等伯の屏風絵、国宝「松林図」を観る。

正月遊び・国立東京博物館・国宝「松林図」

正月遊び・国立東京博物館・国宝「松林図」



六曲一双を並べると高さ156cm×694cmという大作である。

霧と小雨が立ち込めているのか全体を覆った薄靄のなかにぼんやりと、時に力強く松の木々が描かれている。
幽玄の美と枯山水(かれさんすい)を思わせる静寂のなかに人生のはかなさや虚無すら感じさせる禅の世界を表出させた傑作である。

 

帰りに御徒町駅近くで寿司をつまみながら全国の銘酒を味わう。
そういえば子供のころやった正月遊びを思い出す。

いろはかるたに福笑い、すごろくに独楽回し、凧揚げは上手く上がったことがなかったな。

私のような年齢の者でもどれも一度か二度しかやったことがない。
思い出も勝ち負けではなく一緒に遊んだ母親ときょうだいたちの笑顔である。正月遊びは家族を笑顔にする。
家族みんなで遊べるからだろう。

それにしても貧しかったなぁ。
などと考え当時を思った。
うん、これもなかなかいい正月である。

 

 招かれて隣に更けし歌留多かな 漱石

 吹かれつつ獅子舞とゆく伊良胡岬 林火

 糸のべて凧の尾垂るる水田かな 子規

 たとふれば独楽のはじけるごとくなり 虚子

 目隠しが透いて見えたる福笑い 梓月

 双六の賽の禍福のまろぶかな 万太郎