雛祭り・桃の節句(3月3日) 九州雛紀行Ⅱ 目黒雅叙園百段階段 (2017年)
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新型コロナウイルスによる感染拡大によりほとんどの祭やイベントが中止になり、緊急事態宣言解除後も密を避けるために、また準備不足などで秋までは中止の続く日々が続きそうです。
本ブログも一時中止していましたが、過去の祭やイベントを掲載することで気分だけでも東京の江戸情緒や楽しさを味わっていただけたらと思います。
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未婚女性のいない家にとって、雛祭りほど縁遠い節句はない。
和の行事をめぐる私にとって、この日はただ指をくわえて見ているほかないのか。
実はここ数年そうした思いに駆られていたが、茶稽古で3月は床の飾りや棗の品の絵柄、主菓子の模様など、そこに未婚女性がいるとか関係なく季節を表すアイテムとして雛は存在しているのである。
茶道具やカレンダーに一年の行事を月ごとにひとつ象徴的な物を選ぶ場合、3月は徹底して雛や雛祭りに関したものである。
同じく5月は端午の節句に絞られていると思ったら、あやめだったりする。
そうそう、雛祭りは誰もが祝え、参加できるものなのだ。
かくして3月の最大のイベントである雛祭り・桃の節句を迷いなく祝う気持ちになったのである。
まったく、我ながら屁理屈好きのオジサンは面倒である。
そこでまず心晴ればれと出かけたのが、目黒雅叙園の百段階段で開催中の「九州 ひな紀行Ⅱ」(1月20日~3月12日)の雛人形展である。
毎年お雛様展は開かれているが、展示物は京都、山形、滋賀など地域の名家所蔵のものに毎回入れ替わっている。
今年は第八弾で九州の二回目というわけである。
人形の制作された時代も場所もさまざまなせいか、大きな顔に小さな目鼻のお雛様から、とんがり鼻で吊り上がった目が特徴のお雛様など、かなり個性的でユーモラスな物がある。
他にも博多糸ひな、さげもんと呼ばれる布で作った魚や毬などを紐にぶら下げた雛飾りなど、バラエティー豊かである。
同様の吊るし飾り展が京王プラザで開催されている。
これも吊るし雛。
女の子の幸せを願って夫婦円満の鴛鴦(おしどり)の人形や「災難を去る」ようにと猿の人形が吊るされている。
これらの吊るし雛は、晴れ着や着物の端切れを使って各家庭で作られていたようである。
目黒雅叙園の九州雛展での圧巻は、一部屋すべて使って博多の町並みを作り、そこにさまざまな人形を配して花見や舟遊び、五重塔からねぷたまで日本中のめでたいものやお祭りを一堂に会し桃源郷さながらに作り込んだ作品だ。
大きさが統一されているわけではないが、何百という人形たちの表情を見ているだけで時を忘れる力作である。
全体として見ごたえはあるものの、人形や道具の保存状態が良くなく、衣服の模様が完全に色あせてしまっているものなどがあり、ちょっと残念である。
絢爛豪華な装飾と凝りに凝った作りで有名な目黒雅叙園の建物は、宮崎駿のアニメ映画「千と千尋の神隠し」に出てくる湯屋のモデルになっていることでも知られているので、そちらも合わせて楽しめる。
結婚式披露宴会場のある棟のトイレには川が流れ、橋がかかり、まるで京都の料亭のようなので、必ず立ち寄っていただきたい。