盆踊り

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新型コロナウイルスによる感染拡大によりほとんどの祭やイベントが中止になり、緊急事態宣言解除後も密を避けるために、また準備不足などで秋までは中止の続く日々が続きそうです。

本ブログも一時中止していましたが、過去の祭やイベントを掲載することで気分だけでも東京の江戸情緒や楽しさを味わっていただけたらと思います。

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山王祭には最も早い盆踊りが開催され、その後9月末まで東京の各寺社で行われる盆踊りの口切(6月13日~15日)として有名だ。

 

この日枝神社の盆踊りには東京中の盆踊りマニアが集まる。
盆踊りマニアというのは、実に不思議な方々なので少し紹介しよう。

多くは一般の社会人であるが、日本舞踊や民謡踊りを習っている方がほとんどである。
その稽古も茶道や華道などと同じく、一年を通して毎週稽古に励み、積極的に新曲や地方の踊りなどを研究しているつわものである。
セミプロといっていい。
お稽古の発表会のほかに地元のお祭りには必ず出るし、祭りの主催者との関係も深い。

各町内会にはたいがい踊りの師匠さんのような方がいらっしゃって、それぞれの町の祭を仕切っていることが多い。
皆さんも目にする櫓の中段で揃いの浴衣を着て踊っている方々、多くは年配の女性だがあそこで踊れるのは地元の舞踏有力者であり、踊りのお師匠さんの愛弟子たちといっていい。

太鼓を叩く方々もそのお仲間が演じることが多いが、別に地元で太鼓のお師匠さんをやっているグループだったりする。

 

地元の盆踊りではお師匠さんの意向が強く反映され、弟子たちはその指示によって踊る曲が選ばれる。
だから同じ曲でも場所によって踊り方が違ってくる。

一般の方々は、櫓の上の上級者の踊りをまねて踊るので、その踊り方がその地域の特色にもなるのである。

山王祭の盆踊りの写真

山王祭の盆踊り

私は勝手に「さすらいの盆オドラー」と名付けているが、もともと踊りの好きな方々が集まっており、日々研鑽しているので、ほうぼうの盆踊りに出没するのは当然の成り行きで、有名な寺社には各地の盆オドラーが集結することになる。

彼ら彼女らの特長は、きっちりと浴衣を着こなし、踊りは軽やか。
祭の盆踊りの始まる時間になると自然に集結し、そのお祭りの団扇をいただいて腰に差し、曲によってはその場所の踊り方で踊る。
決して地元のお師匠さんの顔をつぶすようなことをしてはいけないのだ。

山王祭の盆踊りの写真

山王祭の盆踊り

二時間たっぷり踊って、さっと帰っていく。

屋台で焼きそばやビールを買うこともなく、多くは終始笑顔も見せない、一種独特の雰囲気を持っている。

 

お祭りの主催者はできるだけ人に集まってほしいので、豪華家電や地元でのお買い物券が当たる抽選券なども用意して踊りを盛り上げようと盆踊りで踊った方限定にしてプレゼントするなど、苦心しているが、用意した景品の大半はこうした盆踊りマニアの方々に行ってしまう。
主催者としては踊りは上手いし、浴衣も着て来てくれるので、来てくれるのはうれしいとしても、地元の人間ではないので商店街活性化には役に立っているかどうか悩ましいところである。

ある盆オドラーの方の話によると、「有名どころの盆踊りで踊っているのは大半がこうした方たち。話はしないが、たいていは顔見知りになっているのですぐわかる。地元の人ゼロなんていう盆踊りも珍しくない」そうである。

盆オドラーたちが上手すぎて、地元の方や子供たちが恐れをなして盆踊りの輪に加われないのかも。

たかが盆踊りと侮るなかれ。
かなり奥が深い。

 

 太鼓だけ少し下卑たり盆踊り  一茶