麦秋

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新型コロナウイルスによる感染拡大によりほとんどの祭やイベントが中止になり、緊急事態宣言解除後も密を避けるために、また準備不足などで秋までは中止の続く日々が続きそうです。

本ブログも一時中止していましたが、過去の祭やイベントを掲載することで気分だけでも東京の江戸情緒や楽しさを味わっていただけたらと思います。

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米の収穫時期は9月だが、麦がいつ実るのかを気にとめたことはない。

 

麦秋という言葉を知ったのは、小津安二郎の映画「麦秋」を見てからである。
とはいえこの映画は農業を描いたものではなく、ラスト、麦の穂がえんえんと映し出されるだけである。

麦が実ることを麦秋というが、字面から勝手に秋に収穫するものと思っていたのは恥ずかしい限りである。

 

かつて刑務所の飯が麦(ばく)シャリといってまずい麦飯だったというのと合わせて、池田隼人の「貧乏人は麦を食え」発言(正式にはこんな暴言は言っていないらしいが)からも日本での麦の地位の低さが測られる。

1950年代まで、日本人は米を補う穀類としてかなりの量を食べていたようだ。
しかし小麦は小麦粉に、大麦・ライ麦はパン用に、デュラセモリナはパスタ用、麦芽でビール、と麦文化の欧州での驚愕すべき多様な麦料理からわかるように、日本人は麦の調理法の研鑽を怠っていたのであって、けっして麦がまずかったのではいことは明白である。

とはいえ現在でも農家ではやはり米が主力だから、成長の早い麦は田植えのころまでに育てておくようだ。

 

麦は米のワンランク下の穀物に甘んじたが、四国や関西圏で独自の進化を遂げ、讃岐うどんお好み焼き、たこ焼きなどの粉もの文化を築き上げる。

麦秋到る。
うーん、麦すごい! 

 

 鳴門見て讃岐麦秋渦をなす 澄雄