紅花

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新型コロナウイルスによる感染拡大によりほとんどの祭やイベントが中止になり、緊急事態宣言解除後も密を避けるために、また準備不足などで秋までは中止の続く日々が続きそうです。

本ブログも一時中止していましたが、過去の祭やイベントを掲載することで気分だけでも東京の江戸情緒や楽しさを味わっていただけたらと思います。

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紅花は口紅や紅色の染料、生薬、食用油に用いる。
名前は紅だが、花は黄色い。
しかし水にさらして乾燥させることを繰り返すことで紅色になる。

 

単に紅一色を得るのではなく、さらす回数などを工夫することで紅、オレンジ、薄紅、山吹、黄色など段階的な色染めができる。

例えば十二単(ひとえ)に用いる赤系統の着物はすべて紅花から採取された染料で作ることが可能。
重ね着すると見事な襲(かさね)色となる。

紅花の種を絞ったものがサフラワー油、マーガリンの原料にも使われる。

 

明治大正のころまでは染料における赤の王者であり口紅や料理油に使われるなど女性にとってはなじみ深い花であったろう。
それほど隆盛をかこった紅花であるが中国産や化学染料に押されて今ではわずかに伝統工芸や観光用に作られているにすぎなくなった。

 

 なつかしき色ともなしに何にこのすえつむ花を袖にふれけむ

 

源氏物語」で光源氏が詠んだ歌である。

ある姫宮につけたあだ名が末摘(すえつむ)花。
紅花の別名である。
不美人で鼻の頭が赤かったことから付けた名である。
以来、末摘花=紅花は不美人の代名詞になってしまったようである。

女性の紅い唇と華やかな衣装を文字通り彩ってきた立役者には大変な不名誉である。

 

その紅花を県花にしているのが山形県である。

今でも紅花の栽培をされているという。
日本海沿岸の県にはある法則があるようだ。
美人の多い県とそうでない県がひとつおきだという法則である。

美人県と言うのは秋田、新潟、石川、京都…。
ほほう。
なるほど。
と思わずうなずく諸兄も多いのではないだろうか。
で、その間にある県が不名誉をかこった県であるが、その中に紅花=末摘花県・山形が!

紫式部源氏物語」がらみでいらぬ詮索をしてしまった。
失礼。

 

 手を戦(そよ)がせて紅花を摘む娘かな 憲吉

 わが恋は末摘花の莟(つぼみ)かな 子規