大陶器市 9月19日~23日(2017年)

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新型コロナウイルスによる感染拡大によりほとんどの祭やイベントが中止になり、緊急事態宣言解除後も密を避けるために、また準備不足などで秋までは中止の続く日々が続きそうです。

本ブログも一時中止していましたが、過去の祭やイベントを掲載することで気分だけでも東京の江戸情緒や楽しさを味わっていただけたらと思います。

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上野公園内にテントを張った特設会場で毎年開かれる陶器市。

骨董市ではなくこちらは新品新作である。
こちらでは有田焼や美濃焼を中心に全国の知られた焼き物が普段使いから観賞用まで一堂に会する。
じっくり見ていると半日はかかる大掛かりなイベントである。

 

我々東日本の人間にとっては焼き物のことを瀬戸物と言うが、九州では唐津物と呼ぶようだ。
唐津佐賀県であり有田焼や伊万里焼といった陶磁器の日本発祥の地である。
今でこそ磁器は食器のほとんどを占めているが、日本にその技術が伝わるまでは焼き物といえば表面がざらざらした素朴な陶器である。
陶器には趣きや手作りの味わいがあるが、重くてもろい。
江戸時代中期に唐津・有田に伝わった磁器は薄く丈夫で表面が滑らか、細工を細かくでき、絵付の華やかさなどもあって一世を風靡するが、その製法は門外不出であったため、磁器の製造は有田・伊万里の独占状態が続く。
なんとかその製法を盗もうと他の窯元が職人になり済まして有田の窯元に入りこみ、盗み出した結果、全国に広まったとされる。

 

茶道の世界では「一楽、二萩、三唐津」などと言われ、楽焼、萩焼唐津焼の三種が珍重される。
実際楽焼、萩焼唐津焼は陶器であり、歴史とプライドがあるためか、つい最近までは茶道具以外は作らなかったようだ。
陶器による茶道具とは茶道や煎茶道で使う、主に茶碗、茶入(ちゃいれ・濃茶を入れる小壷)、水指(みずさし・釜のお湯を足す水の入れ物)、蓋置(ふたおき・釜の蓋を置く台)、香合(こうごう・お香をいれる器)、建水(けんすい・使ったお湯やお茶を捨てる器)、花入れ・花器のことである。
今でも茶道の世界で磁器より陶器の方がもてはやされるのは、たんに茶聖・利休の時代には国産の磁器が存在しなかったからだと思う。

 

かくいう私も茶道具には磁器よりも陶器を好む。
伊賀焼、黄瀬戸、信楽焼備前焼などであるが、最も愛するのは「へうげもの古田織部が考案した織部焼である。
遊び心いっぱいの大胆な柄と独特の深い緑色と黒色の世界である。
しかし女性はごつごつした陶器より繊細で色鮮やかな磁器を好む方が多い気がする。

 

ちなみに茶人にとってもっとも高位にある茶碗といえば天目茶碗である。
一見普段よく見る飯茶碗と形も大きさも似ているが、これは献茶や最高のお客様用に供される茶碗なのである。
値段も破格である。
国宝窯変(ようへん)天目茶碗がその最高峰とされている。

 

さて陶器市であるが、別に茶道具ばかりではない。
ラーメン丼や洋食の皿、サラダ皿やカップ&ソーサー、箸置き、飯茶碗、向う付、小鉢などのほうがメインと言っていい。
見ているだけでも楽しいイベントである。

 

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大陶器市