蛍狩り・椿山荘とおとめ山

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新型コロナウイルスによる感染拡大によりほとんどの祭やイベントが中止になり、緊急事態宣言解除後も密を避けるために、また準備不足などで秋までは中止の続く日々が続きそうです。

本ブログも一時中止していましたが、過去の祭やイベントを掲載することで気分だけでも東京の江戸情緒や楽しさを味わっていただけたらと思います。

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大都会東京であっても蛍狩りは可能である。

 

江戸川橋にある椿山荘では育てられたホタルが庭園に放たれる。
園内に作られた草木に覆われた谷の小川に集まっており、夜八時過ぎころ、谷に架かった朱塗りの橋の上でじっと待っていると、一匹、また一匹と暗闇の中ほのかな光を発しながら独特の軌道を描いて飛ぶさまはまさに幽玄の世界。

 

光るのはオスで、その光でメスの歓心を買っているという。

愛の営みであるからあくまで優雅に。
その光の軌跡を例えるなら、先端が光るタクトを持った指揮者が振る長音符のようであるし、能や日本舞踊、神楽の動きにも共通しているようにも思える。
そう、動きそのものが和を感じさせる。
それも平安時代にタイムスリップしたかのようだ。

 

♪ほうほうほたるこい あっちのみずはにがいぞ こっちのみずはあまいぞ ほうほうほたるこい

 

子供たちの数は多いが、この「ほたるこい」を唄っている姿は見られない。
しかたがないので心でつぶやいて気分を盛り上げる。

ゲンジホタルの名は「源氏物語」の主人公の光源氏から名をとったらしい。
まさかホタルは光るから光源氏
だからゲンジボタル
なんて連想ゲーム的な理由じゃあるまいな?
まぁ優雅な動きと雅な雰囲気が名前によく合っているが。
ヘイケホタルは単にあとから源氏に対抗して付けられたとか。

 

庭園で三十分ほど見物してから、椿山荘内に設けられている、蛍を間近で観察できる飼育スペースへ移動。
ここでは通路のガラス越しに蛍たちの光っている姿がすぐ目の前で見られる。

 

蛍狩りでお勧めの場所をもうひとつ。

豊島区にあるおとめ山公園の「ほたるの夕べ」。
おとめ山に設置されているほたる舎で育てられた蛍を毎年一般公開するもので、2017年は7月16,17日に行われた。

こちらは午後6時に入場整理券を配布するのだが、その時点でかなりの行列を覚悟した方がいい。
七時過ぎに三十分単位でグループごとに入場できるのだが、私が蛍舎に入れたのは8時頃か。

舎内は真っ暗で右も左も上下左右すら一瞬わからないほど。
目を凝らしてゆっくり半歩ずつ進んでいくと舎内のあちこちで蛍が飛び、また草木にとまったまま光っている様子が見える。

こちらは蛍の数が多いので目を凝らして待つ必要はない。
ここにも、そこにも、あそこにもと、目が忙しい。
舎内見物(見学?)時間は実際数分くらいだと思うが、たくさんの蛍が見られて幸せな気分に浸れる。

おとめ山には数種類の屋台も出ており、浴衣姿の納涼客でにぎわう。
おとめ山公園は普段は午後五時閉園。
椿山荘とおとめ山公園はどちらも入園料、蛍舎見学、ともに無料。

 

 狩衣の袖の裏這う蛍かな  蕪村