名主の滝 (2019年)

 ---------------------------------------------------------

新型コロナウイルスによる感染拡大によりほとんどの祭やイベントが中止になり、緊急事態宣言解除後も密を避けるために、また準備不足などで秋までは中止の続く日々が続きそうです。

本ブログも一時中止していましたが、過去の祭やイベントを掲載することで気分だけでも東京の江戸情緒や楽しさを味わっていただけたらと思います。

---------------------------------------------------------

 

暑い夏には山に行って滝など眺めたらさぞ気持ちよかろうと思うのだが出不精の私は毎年企画倒れに終わる。

 

そして東京の、いやかつての江戸のど真ん中にも滝があることを思い出した。
その名も名主の滝である。

 

江戸時代末期の王子の名主・畑野孫八が自邸に開いたのが始まりとされ、滝に名主の名がつけられた。

かつて王子付近には滝が多く、王子七滝と呼ばれた有名な滝があったが、現存するのはここのみ。
現在は名主の滝公園として一般公開されている。

名主の滝公園の写真

名主の滝公園

 

この名主の滝公園は一心泣き相撲の行われる七社神社から飛鳥山公園を挟んで歩いて二十分ほどのところにあり、王寺駅や王子稲荷のすぐ近くである。
行ってみて驚いた。

自宅を公園にしたとは聞いていたが、実に立派な門構えの屋敷の門をくぐると、そこはとても東京とは思えない山の中の風情である。
うっそうと木々が茂って真夏の太陽光を遮り、池と小川がそこかしこに流れている。

名主の滝公園の池の写真

名主の滝公園の写真


東京によくある大名庭園とも趣が違う。
しかもごみひとつ、枯葉ひとつ落ちていない手入れの良さに感心する。

公園の中には三つの滝が示されている。
その中で最大の滝が男滝と名付けられた落下八メートルの滝である。

名主の滝公園の男滝の写真

名主の滝公園・男滝

名主の滝公園の男滝の写真


その景観のすばらしさにはしばし圧倒されるほどである。
ただこの滝、夏には水量が不足するため、時間制限で、朝十時から水を流している。
無料で公開している公園なのになんとも心配りが素晴らしい。

 

池のそばには地元の方たちが鳥の写真を撮りに来ていた。
聞くと、これほどの場所であるにもかかわらず来園者はほとんどないという。

実は今回初めて来る前は私も少し侮っていた。
ここは都営七庭園に匹敵する、東京が誇る珍しくも素敵な「滝の公園」であると申し上げておこう。
開園は九時から午後六時(夏季)。

 

 昼見たる滝の夜の音聞きにけり 万太郎

 石(いは)走る滝もとどろに鳴く蝉の声をし聞けば都し思ほゆ 万葉集三六一七