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新型コロナウイルスによる感染拡大によりほとんどの祭やイベントが中止になり、緊急事態宣言解除後も密を避けるために、また準備不足などで秋までは中止の続く日々が続きそうです。

本ブログも一時中止していましたが、過去の祭やイベントを掲載することで気分だけでも東京の江戸情緒や楽しさを味わっていただけたらと思います。

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夏の到来を告げるもののひとつに蝉の声がある。

6月に入ってまず耳にするのが、朝夕に、「カナカナカナカナ、キチキチキチ、ケケケケ、カナカナカナ」と啼く中型の蜩(ヒグラシ)。
そして同じころ早朝と夕暮れ時に「チー、ジー、チッチッチ」と啼く小型のニイニイゼミである。
夕方に啼き、その声が合図のように日が暮れるためヒグラシの名がついたという。
蜩、ニイニイゼミとも7月にも見られる。

 

続いて啼くのが油紙のような茶色の翅(はね)から名がつき、夕方や夜に「ジージージージー…ジジ」と、なかなか暑苦しいというか、夏を思わせる啼き声の中型のアブラゼミ
湿気を好むため平地の林などに多くいる。

 

そして8月末から9月の頭になると、ミンミンゼミの登場である。
「ミーンミーンミンミンミンミン」と啼き、蝉の声といえば、このミンミンゼミを思い起こす方が多いのでは。
東日本太平洋側では平地に多くいるため最もなじみの深い蝉である。

ところがこのミンミンゼミ、暑すぎるところにはおらず、森林などの涼しいところを好み、西日本では山にいるため一般にはその声を聞くことはほとんどないためあまりなじみがないという。
東西の境はミンミンゼミで分けられているともいえる。

ミンミンゼミより少し早く8月に入ると啼くのが日本特産の大型種であるクマゼミである。
「シャシャシャシャ、センセンセンセン、ジーッ」と啼き、傾斜のある低地高地を好み、棲み分けする。
50ミリから70ミリにもなり大変大型で全体に黒っぽい。
昆虫採集の子供たちにとっては特に人気の種である。

 

子供のころ私の育った新潟市では蝉というものを見たことがなかった。
それが東京に住むようになってから蝉の多さに驚いた。

通常の考えでは東京より地方のほうが自然が多いと考えるが、実際はそうではない。
山間部や沿岸部を別にすれば、地方都市は東京(23区)に比べて極めて自然が少ないことに気付かされる。
つまり当時の新潟市の平地には、ほとんど森林公園や林が存在しなかったため蝉がいなかったのである。

 

地方から東京に来たかたがたも、「東京は緑が多いですね」と驚かれることが多い。

これは東京にはもともと大名屋敷があり多くの庭園がそのまま残された結果、そのまま公園となり今も緑豊なのだということと、その公園の多くが東京都の管理下に置かれ保護されていることである。
後者である保護が地方にはできない。その理由は圧倒的な財力の違いである。

東京に引っ越してきた中学生の頃、その地方の財政格差を蝉ひとつで思い知った。
都会の緑の多さは財力の多さと比例しているのである。

 

そして夏の終り、晩夏から初秋にかけて「ツクツクホーシ、ツクツクホーシ、ツクツクホーシ、オーシーツクツク」の啼き声でおなじみの小型種ツクツクホウシである。
ちなみに東京都の島しょである八丈島では蝉はツクツクホウシしかいないという。

夏の風物詩蝉の声が聞こえなくなると秋の到来である。