黄金展
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新型コロナウイルスによる感染拡大によりほとんどの祭やイベントが中止になり、緊急事態宣言解除後も密を避けるために、また準備不足などで秋までは中止の続く日々が続きそうです。
本ブログも一時中止していましたが、過去の祭やイベントを掲載することで気分だけでも東京の江戸情緒や楽しさを味わっていただけたらと思います。
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黄金の国ジパング。
この甘美な響きは十六世紀、マルコポーロが著わした「東方見聞録」によってもたらされた。
果たしてこの記述が日本を指すのかどうか。
当時日本第二位の都市平泉の金色堂や奥州の金の大量産出などが伝わったとされる説もあるが、日本を表す他の記述にサイやゾウがいるとか人肉を食べるとかいろんな地域の情報がごっちゃになっているので判断が難しいようだ。
しかし日本が黄金の国であるとか、日出処(ひいずるところ)の国であるといった描写は、すくなくとも辺境国家の民としてはなんだか誇らしい気分にさせるのは確かである。
そんな日本人の心をくすぐるのが年に何回か各百貨店で開催されている「黄金展」である。
会場にはこれでもかと金製品で埋め尽くされる。
仏像や「りん」などの仏具や神具、食器がメインだが、ウルトラマン像やずばり大判小判なども展示されている。
仏具が多いのは普段仏壇に飾っておき、いざとなった時にすぐに持ち出せる財産として、古くから作られていたようだ。
2016年、私が興味をもったのは黄金の茶道具で点てたお茶がいただけるというからである。
黄金の茶釜風炉、黄金の棗(なつめ)、黄金の茶碗に黄金の香炉、黄金で作った牡丹の花に花器、「なんとまぁ」である。
一千万円の茶碗に一億円を超える茶釜に花、そんな大層な物に囲まれて黄金の茶碗で薄茶をいただく。
う~ん…。
茶道の世界でも秀吉が利休に作らせた黄金の茶室に黄金の茶道具がある。
琳派の屏風絵は金箔が全面に貼られこれまた確かに壮観である。
はたまた黄金で彩られた建築物である金閣寺がある。
きらびやかさにめまいがしそうである。
その気分が味わいたくてやって来たのは確かである。
しかしこの気恥ずかしいほどの成金趣味というか、人間の欲望にストレートというか、これがツタンカーメンなどの過去の産物としての展示ではなく、新作であり販売を目的としていることに人間の欲望を感じざるを得ないのである。
つい五十年ほど前まで世界は金本位制ですべての金銭は金に交換可能な時代だった。
金は装飾品であるだけでなくお金そのものだったのである。
だからか金を美しいと思う気持は、札束を見せられて美しいとため息をつくのと同じという感覚がある。
そのため過剰に金を忌み嫌う人も多い。
映画「黄金」では砂金を手に入れた主人公が奪われるのではないかという疑心暗鬼からそれまでの仲間を信じられなくなり悲劇へと進む。
まさに金に目がくらむのである。
それが金の持つ特殊性と言っていい。
人が人に会う時、その人の価値がお金を持っているかどうかで判断するようになったのはいつからだろう。
この場所に長くいると何かに染まってしまいそうである。
うん大変勉強になった。