アワビ・トコブシ・サザエ漁解禁

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新型コロナウイルスによる感染拡大によりほとんどの祭やイベントが中止になり、緊急事態宣言解除後も密を避けるために、また準備不足などで秋までは中止の続く日々が続きそうです。

本ブログも一時中止していましたが、過去の祭やイベントを掲載することで気分だけでも東京の江戸情緒や楽しさを味わっていただけたらと思います。

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高級という意味では数ある貝の頂点に位置するのがアワビだろう。

 

種類は九百ほどあるらしいが食用にされるのは主に四つ。
黒アワビは減少中で需要過多、エゾアワビは最も多く獲れ冬から春にかけてが旬。
マダカアワビはめったに手に入らない高級品だが柔らかいので煮貝が最高。
主に西日本で獲れるメカイアワビは身が柔らかいので刺身に向かないが煮貝やステーキにすると美味で値段が安め。

市場に出回っているのはこれらの4種類だがお目にかかるのはほとんどが黒アワビかエゾアワビ
アワビは肉を食べるだけでなく、殻は高級細工物の螺鈿(らでん)や真珠養殖の核に用いられる。

 

ほかにアワビの仲間でトコブシがある。

エゾアワビなどに比べて10cmほどと小振りなのでアワビの子供と勘違いされるが、違いは殻の穴の数。
アワビは4~5個でトコブシは6~9個、値段は安いがうまさは引けを取らない。

本来11cm以下のアワビは獲ってはいけないはずだが、和食店ではかなり小さなものもアワビと称して出てくる。

トコブシは5cm以下が禁漁であるから、小さいのはトコブシかも。
今度料理に出てきたら殻の穴の数を数えてみよう。

 

チリアワビはアワビに食感は似ているが全く別種の貝で中南米産のロコ貝といい、主に回転寿司屋のネタである。

コリコリとした食感が魅力のアワビだが、実は煮貝などに加工されるとそれっぽい貝でもあまり気にならないしなかなかおいしい。
ウニの鮮度は味に大きな違いがあるがアワビはさほど気にならないのは私だけなのか。

 

考えてみるにどうも日本のアワビ料理は素材の優秀さをあまり生かし切っていないように思う。

たとえば中華料理の干しアワビの蒸し焼き、フランス料理のアワビのステーキなどは特大アワビを使った超高級料理として知られるが、では日本は?
刺身が最高と言われているが、大変申し訳ないが中・仏料理に比べどことなく見劣りしている気が…。

演出の問題も含め、要は超高級料理なのに出来上がった料理が高級に見えないのだ。

 

実は高級エゾアワビの大型の物は大半が中国を中心に輸出されてしまっているのだという。

このことは日本人より中国の方が高く買ってくれるということしか考えられない。
世界中の高級食材を輸入しているグルメ大国日本であるが、一番うまい国産のアワビを輸出して、自分たちはロコ貝を食べて満足している日本人を見ると、アワビに関してはあまり気が入っていないのが分かる。
これは私同様多くの日本人が値段と日本のアワビ料理が見合っていないと思っているのではないか。

その点サザエの壺焼は見た目も味も演出も値段も完璧な料理だと思う。
私も大好きである。

もっとみんなが胸躍らせかつ自慢できるような日本のアワビ料理を何としても考えてもらいたいと思う。

 

私が今のところ好きなアワビ料理は海なし県の山梨で名物料理になっている煮貝である。

小ぶりのアワビでメインにはならないが、つまみにいい。
ところがこの煮貝を単純にアワビと思っていたら、アワビの場合ははっきりアワビの煮貝と言うそうで、単に煮貝と言った場合、トコブシを指すようだ。
あ、なるほど、やっぱり。
とはいえ私にはさして問題ではない。

今宵は神楽坂の甲州料理屋で煮貝に馬刺し、ほうとうを食べつつ漁解禁なった貝類について思いを馳せよう。

 

 太陽へ海女の太腕鰒さげ 三鬼